|
| バイケミニュース最新号へ戻る |
2007年12月号
バイケミニュース編集部
例年ですと12月はバイケミグループの生産状況のお知らせですが、今年は竹の農業利用と農文協の「現代農業」に掲載された竹を使ったバイケミ農業の事例の紹介とします。
日本で竹を本格的に農業へ利用を始めたのはバイケミ農業の実践においてです。植繊機を開発した1993年頃から試行を始めて1995年頃から本格的に使用を始めました。1997年頃から成果が確認されて、農文協の「現代農業」が最初に取り上げて掲載したのは2000年4月号です。
最近では放置竹林対策の一環として取り上げられるようになり、最近の現代農業では毎年10月号に竹の利用特集の企画が定番化されて、農業利用以外全ての竹利用項目を取り上げています。また最近これらの動きに影響されたせいか植繊機以外の竹処理機械も登場していますが、竹の特質と農業応用への理論を伴う利用と結果という面での発表はバイケミ事例だけです。
2000年4月号より2007年10月に至る約7年間、現代農業に紹介されたバイケミの竹利用事例を現代農業の号巻と頁、対象農産物と生産地を表−1にまとめました。詳細内容は各号巻の頁を参照してください。
尚ホームページのカタログファイルに「バイケミ農法による植繊機を活用した竹の農業利用」というパンフレットがダウンロード出来るようにしてあります。これは本号の説明を要約したものですので、本号閲覧後合わせてご活用下さい。
| 表−1 現代農業バイケミ農業掲載事例 バイケミ農業竹利用効果 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
竹がタケノコから1年で成木になる生長力のすごさから竹の持つ効用は昔から信じられて、食用、薬用や竹酢、竹炭で利用されてきました。また竹林土壌の神秘的効用から竹林では特殊な土壌の生成が信じられています。
竹を農業利用する場合、先ず一般に堆肥材料としては、表皮が珪酸分により強固になっており、腐蝕分解され難いため忌避品として現在も避けられています。
しかし古くは各地の山間農村では、火力が強く破裂するので囲炉裏の燃料に不向きな熊笹や小竹(シノタケ)などを手押しの裁断器で短く切って、更に細片を金槌で叩いて破砕して稲作の生肥料として使われていた話が伝承されています。
飛騨と信州を結ぶ日本アルプスの峠に女工哀史で有名な野麦峠があります。この峠一面は熊笹でおおわれています。熊笹は10年くらいに一度花を咲かせて稲穂のような実をつけます。
飛騨でこれを「野麦」と呼んでいます。これが峠の地名の由来です。実は不思議な事に穀物が不作の時に熊笹が実をつけて、農民はこの実を粉にして団子を作り、飢えを凌いだそうです。
このような山奥の農家では肥料の調達にも困り、非常時の食料に役立つ熊笹の利用と言う方法を思いついて実行したと考えられます。またこの熊笹の生肥料で作った米は非常に美味しく、土地の人は土壌の地気を活かして作った米と言うことで、活地気米と呼んでいたそうです。
しかしこの作業は全て手作業のため重作業と生産性の低さから生肥料の生産量に限度があり、活地気米の栽培面積も自家消費米の生産量に留まり、市販には供されなかったようです。
戦後の経済発展が、山間農村にも及び、生活様式の改善で囲炉裏が家庭からなくなると自然に活地気米もなくなりましたが、一部の篤農家では伝承されていたようです。
実は橋本会長は植繊機を開発して全国へ拡販中訪れた富山県の山村の宿でこの伝承話を聞きました。橋本会長は戦後家業の農業を継承した際、肥料入手難で近くの明石川の川原の葦を同様に細断して生肥料として利用して美味しい米を多収していた経験から、直ちに植繊機の利用を思いつき実行しました。
これらの話はバイケミ農業講話録に収録しています。合わせて参照下さい。尚「活地気」は竹を利用するバイケミ農産物につける商標に登録しました。
植物の成長は、必要な養分の生成のための同化作用、生長のために養分を消費する異化作用と同化と異化作用のバッファーとしての貯蔵作用の三作用によって行われます。
竹の生長では、生成された同化養分は必要に応じて利用されるまでは、貯蔵養分として竹の稈や地下茎にデンプン粒の形で蓄えられます。従ってタケノコが生長したり、地下茎が生長したりする際はこの貯蔵養分のでんぷんが移動します。
図1は稈と地下茎における貯蔵でんぷんの季節的推移を示すものです。
| 図1 竹の稈と地下茎における貯蔵でんぷんの季節的推移 |
![]() |
| 文献 内村悦三 「竹への招待」研成社 1994年 |
図2は孟宗竹の稈の横断面で維管束の断面分布を示します。図3は1組の維管束鞘を示し、図4は2本ある道管の1本を含む縦切断の断面です。
|
||||
|
図5は柔細胞中のでんぷん粒×500倍と図6はその拡大×2000倍です。
|
以上の組織構造を持つ竹を、植繊機で加圧、圧縮、すり潰し、吐出し膨潤作用で解繊すると、細胞壁を構成しているセルロース、ヘミセルロースはリグニンの固定から開放されて剥きだしになり、その周囲にでんぷん粒が存在する状態になり、微生物のアクセスが容易となり腐蝕されやすい状態になります。この状態にするのが植繊機による機械作用の特徴で、この性質を利用するのがバイケミ農業です。
竹の特性を農業に利用する要点は次の通りです。
竹は草木でもなく、樹木でもないが、植物分類上ではイネ科に属しています。イネ科植物はおれやすい茎を有する一年生の草木ですが、竹類は茎部の細胞が木化する樹木の性質がある多年生植物です。竹は草木の性質と樹木の性質と両方を持ちますが、どちらとも相違する特別の性質があります。また特徴的なことは生長がでんぷんの移動により、3〜4ヶ月ぐらいという極めて短期間であり、それ以後の生長は枝葉部にわずかな生長は見られるものの枯死するまでの十数年間、伸長も肥大もしません。また繁殖法は稀に有性繁殖を起こしますが、通常は無性繁殖です。また中空の稈を有し、稈は繊維質に富み、外側は珪素分を含む硬い外皮で覆われています。
竹の農業利用は、竹の栄養成分の利用と土壌への作用性の利用という二面性があります。即ち竹の生長特性や分析結果(※2)で明らかな通り養分ではでんぷん、ブドウ糖の低炭素糖類が豊富であり、土壌への作用性では硬い繊維質の樹木質が土の表面で土壌微生物の菌床となり、土壌微生物の活動場所の提供し酸化層の形成を助けることです。(※2:ホームページカタログ参照)
この両特性がバイケミ理論における地表面酸化層の形成と微生物との共生の場を提供する事になります。
竹の農業利用に当たっては、竹の持つ特性だけが効果を出すものではありません。従って通称有機農業における堆肥の代替感覚で使うものではありません。
植物有機質が微生物により腐蝕分解されて腐植にいたる間の酸化層内で起きる生化学反応の結果の利用が農業利用であり、この理論がバイケミ農業理論です。
竹は農業利用する時、微生物を関与させる面ではすばらしい特性を持っていますが、その効果の拡大と持続には、竹と同類の禾へん稲科植物(稲藁、葦、茅、笹)や、落ち葉、枯れ草での補完や、特に元の作物の残渣や果樹の剪定枝等の併用での補完を工夫すべきです。勿論竹の利用をはじめこれらの有機質の利用は全て植繊機による木質の解繊が前提です。
表−1の現代農業2000年4月号に掲載した「植繊機を使う農業」の解説文に一部加筆したもので、以上の内容の要約になっていますので、合わせてご覧下さい。
自然界の植物の生存サイクルは植物自身の枯れ葉を地面に落とし、そこで種子を発芽させて生命のサイクルが始まります。それならば枯れ葉に代わり生育中の元気なままの青草を使えないだろうかと誰しも思います。この思いを実現するために考えだしたのが植繊機です。
従来考えていた農業論に植繊機を実際に使った結果を加えて体系化したのがバイケミ農業理論です。
地球上には無駄なものは何一つ存在しないと言われています。そして自然界の植物が元気に生長するのは、生態系を守った育ち方をするからです。
その育ち方とは、植物は枯れて茎葉を地面の上に残し、そこにまず青カビを発生させて、子孫となるものの根が伸びる土壌の環境を整えます(浄化や還元、抗菌といった作用)。根を守り、養分の吸収を容易にしてやるのです。
一方枯れた茎葉の有機物は、大気の80%を占めるチッソ及び地面上を這うように存在する一酸化炭素を吸収して土壌菌のエサとなり、土との接地面から腐蝕して、植物に栄養や免疫となる成分などを生成して供給します。自然の植物はこうした自らが起点の一つとなる栄養のリサイクルによって、元気に生長しているのです。
しかし、人々が食用する作物には味覚成分が必要で、味のよい作物を育成することが農業の本旨です。「農」の字は、貝殻で作った鎌で生育途中の青草を刈り、作土の上にその草を広げておいしい作物を作ることを意味しています。
青草がおいしい作物を作る肥料となるのは、地上に置かれて腐る際に生成するカルボキシル基が青草の炭水化物と結合してグリコーゲンという甘みの素が生成され、またタンパクと結合するとグルタミン酸という旨みの素が生成されるからです。しかし青草はこれまで農業の肥料としては利用されてきませんでした。栄養成分が多いためにかえって腐敗しやすかったからです。
しかしその青草に通気性をきたせてやることができれば、腐敗が腐植に変化します。青草がそのまま「生の肥料」として活用できるのです。この生肥料を作るのが「植繊機」という機械なのです。
「植繊機」のおおまかな仕組みは、雑草や果樹のせん定枝、小竹、葦(ヨシ)、作物残渣、ワラなどを、あらかじめチップ化しておいて(直径20o以下なら付属のカッターで裁断できる)、それをホッパーから投入します。中のスクリューがそれを圧縮(7〜12気圧)、混練し、さらにカッターによってミンチ状にすりつぶして、機械先端部の穴からバラバラにほぐれた繊維粉末にして出すのです(加圧の状態からいっきに大気圧へ出すことで、細胞がふくらみ、組織は粉砕される)。まるでパウダーのようです。非常に硬いモミガラなども細かくすりつぶされ、吸水性を増して、水の中に入れると瞬時に沈みます。
雑草の種子はすりつぶされて発芽しません。また処理の際の熱は60〜70度とたいして上昇しませんが、加圧によって細菌などはすべて死滅して、殺菌殺虫の効果もあります。
「植繊機」では自分が使いたいと思う植物を繊維化し、有機質の生肥料を作れます。それを、土表面におくことで(土と混和せず、また通気性を確保する程度で深く起こさない)、冒頭に紹介したような自然のサイクルが再現して、しかも竹なら、そのもっている糖分やミネラル類がうまく取り込めるようになります。
青草と枯れ草、モミガラ、稲わらなどを混合処理すれば、もっと面白い肥料もできます。
日本の国土は世界地理的に見れば海洋性温暖湿潤地帯に属しますが、全国各地気象、風土は違い各々の地域での里山農業をもとに農業文化が形成されて農業が持続してきました。
現在の画一的な有機農業論でなく、本来の安心、安全、健康で美味しい農作物を作る農業を考えるとき、地域の自然と対話し観察する農業を行うために、身近に植繊機を置かれることをお勧めいたします。
(2005年12月 農文協 現代農業2000年10月号の原稿に一部加筆)